パリ時間11時15分着予定。
自宅を出てから、いったい何時間たったのだろう?
「今の時間わかりますか?」
「どこの?」
こんな会話が飛び交う。
ニューヨークに着いて、13時間戻し、パリに行くのに6時間進め、普段時計を見て生活しているので、敏感でなくなっている生体時計は益々狂ってしまっている。
コースアシスタントのU田さんは、腰の調子が悪いらしく、かなり辛そうだ。
パリで乗り継ぎ、イエテボリまで3時間、私も腰痛持ちになりそうだ。
パリ着。添乗員のSさんの声が響く。
「申し訳ございませんが、乗換えまで55分しかございません。皆様、急ぎ足でお願いいたします。私は、連絡の地下道を抜けましたら、走りますので、皆様はまとまって後からおいでください。」オイ、オイ、大丈夫かい・・・
大丈夫じゃなかった。
エールフランスのカウンターに着くと、31人(全員)分の荷物が間に合っていないらしく、荷物と一緒でないと乗せないと言われているらしい。
またまた、添乗員は交渉続行。
コースアシスタントのS田さんも応援に行って、交渉を続ける。
この便がだめなら、最終便になるようだ。
度胸があるのか、お任せ状態なのか、空港職員と一緒に写真を撮ったりしているグループもある。
それでもやっぱり不安がいっぱい。皆の不安顔の中に、S田さんが走ってくる。
「チケットを出し始めました。急いでカウンターまで来てください。アルファベット順に並んでください。」
荷物は後の便になるが、搭乗券が出た順に乗ってもらい、乗れなかった人は次の便・・・
オイ、オイ・・・
アルファベット順?自分は何番目になるんだ?
あいうえお順なら慣れてるけど・・・
ええっと、A・・・B・・・皆並びながらカウンターへ。
「S本さん2人、S水さん、S田さん・・・」
開口一番、添乗員が搭乗券を握って、声を張り上げる。
Sの人なんて後ろの方でのんびりしている。中々、出て来ない。
???、アルファベットってSからだったっけ?
どうやら最初のグループにコースアシスタントのS田さんを入れる為らしい。
搭乗券を受け取り、S田さんに付いて何人かが、走っていく。
「荷物も一緒に乗るそうです。」
エールフランスの職員と話していた添乗員が、こちらを向いて話し始めた。
「職員は定刻出発を諦めたようで、皆さん、全員お乗りになるまで待つそうですが、二人分の席が足りないので、U田さんと私は次の便で参ります。」
皆の顔に安堵と不審の色が交錯する。
「皆さんには、S田さんがご一緒しますので、ご安心ください。」
「あちらの空港にはO教授、T先生も迎えにいらしてますので、大丈夫です。」
添乗員は、「安心、大丈夫」を連発しながら、搭乗券を渡して、搭乗口へ急がせる。
それって、ちっとも安心でもないし、大丈夫でもないんじゃない?・・・
そして、本当に大丈夫じゃなかった!
パリからスェーデンのイエテボリまでは国内線扱いなので、今まで乗ってきた飛行機に比べるとかなり小さい。
「えっ、こんな小さいの?」またまた、不安顔の皆・・・。
国内線としては、別に特別小さい訳ではないが、他の国へ行くのだからと、皆、釈然としないのかも・・・
やれやれ、やっとイエテボリ空港に到着。
荷物を受け取って、両替もしなければ、こちらの通貨を全く持っていない。
さて、トランクが早く出てこないかと、皆で荷物のターンテーブルを見つめる。
トランクは出始めたが、グループのトランクの姿は見つからない。
S田さんも近くに寄って来て待っていると、
「英語の出来る人だって〜!」
グループの後ろの方から呼ぶ声がする。
空港の係員らしい人が来て、彼女と話しをしている。
彼女が困惑気味の顔で、皆に話し始めた。
「荷物は載って来なかったそうです。次の便で来るそうなので、私はこの人と一緒に荷物の手続きをしてきます。皆さんは外にT先生たちが迎えに来ていますので、先に出ていてください。」
まあ、トランクが無くては待っていてもしょうがない。
皆ぞろぞろと出迎えの先生が待つ外のロビーへと向かう。
「皆さん大変でしたね。28時間お疲れ様でした。」
元気なT先生の声が出迎えてくれる。
「あら?S田は一緒じゃなかったの?」
荷物が一緒に来ず、次の便になる旨を話す。
「え〜、本当?」T先生にも如何にもならない事なので、一同バスでS田さんを待つことにする。
空港を出ると空は晴れ渡り、焼けるように暑い!
うそ、、、イエテボリって、日本の11月くらいの気温じゃなかったっけ?
バスの中も、ムンムンするくらい暑い。
そういえば、T先生はノースリーブ姿だった。
S田さんが戻り、バスが出発する。
T先生によるとスェーデンは異常気象で、このところ雨も降らず晴天続きで、かなり暑いらしい。
ホテルは、高速道路で20分ほどの所にあるそうだ。
皆、早く横になって足が伸ばしたい!
ガイドらしい人が一緒に乗って、イエテボリの町について説明してくれるが、バスは窓も開かず、空調も悪いのか、気持ち悪くなりそうに暑い。
高速道路なのに、バスはノロノロ走る。
こちらでは、バスは高速道路でもあまり速度が出せないらしい。
それにしても、暑いし、ノロノロ・・・ノロノロ・・・キッ?
止まった?・・・高速道路上で?
運転手が、エンジンがオーバーヒートして走行できないと言う。
??????ウッソ〜!
ものすごく暑いバスの中は、ブーイング!!
到着まで28時間、我慢し続け、荷物は着かない、猛暑、バスは高速道路上で停止!
交替のバスが迎えに来るのを待つことになる。
T先生がいくら慰めの言葉を言ってくれても・・・・
「私たちが、何をしたって言うのよ!・・・早く足を伸ばしたい!」
一同の思いだろう・・・
バスを乗り替えて、やっとホテルに着いた。
チェックインの手続きの為、ロビーでしばし待たされる。
皆、クタクタの筈だが、ホテルに着いた安堵感から笑顔が浮かぶ。
ホテルのロビーには、何故か日本人おばさんツアーが座って話し込んでいる?
私たちは、自分たちがかなりの団体さんなのも忘れて、「何しに来てるんだろう?」とヒソヒソ声で突付き合ってしまう。
それくらい、ここイエテボリは観光的ではないと思われるのだ。
部屋割りにしたがって鍵を貰い、二人部屋の人たちの「よろしく〜!」の声が飛び交う。
さてさて、私の相方は「S戸さん」、最初から名簿で名前は分かっていたが、顔合わせは初めて。
部屋割りは、大体年齢で決めたらしいので、S戸さんもかなりのベテランみたい・・・
部屋に入り、「フウ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・。」二人とも、長い溜息が出る。
私は、初対面の人の前なのに、靴を放り出してベッドに倒れこんで、伸びをした。
食事なんていらない、このまま、眠り込んでしまいたい!
しかし、明日からの研修の日程等、打合せや教授陣へのご挨拶の為、ウェルカムパーティーに出なければならない。
着替えはないが、シャワーを浴びて2日間の汗を流す。
ちょっと元気が出た。
ウェルカムパーティーへ・・・
ロビーに集合、バスで海岸線のレストランに向かう。
メインのR教授は、行政との会議があり欠席、V教授は少々遅れるらしい。
T先生の
「海が綺麗よ。見てらっしゃ〜い。写真撮ってきたら!」
の声に、飛び出して行く。
皆、若いなぁ・・・
私も涼しくなった空気の中、深呼吸してみる。
思えば長い道程だった・・・・・いけない、、、今から始まるのだった!
V教授が中々現れないので、食事を始める事になった。
日本から来ている通訳役のO教授のご挨拶やスタッフの紹介。
お料理:スモークサーモン・平目ディル入りホワイトソース・チョコレートタルト
隣に座った子は、勤務先の資金で参加した衛生士歴6年目のH田さん、しっかり成果を持って帰らなければならず、大変そう。
お向かいの二人は、何故かダブルでS本さん。北海道と九州から参加。
白ワインで乾杯!
ワイワイ、ガヤガヤ、食事が始まった。
デザートになり、セルフのコーヒー・紅茶になった。
H田さんが、気を利かせてコーヒーを持ってきてくれる。
食事を始めた時、夕日の入っていた窓は、夜の帳に包まれている。
??、食事が終了してしまったが、V教授現れず・・・。
皆、重くなった瞼を押し上げるようにして、ホテルへ向かう事に。
荷物が届くはずなので、寝るわけにもいかず、着替えが着いたら、お風呂に入ろうと思い、二人ともベッドに横になり、ぼんやりおしゃべりしていたが、疲れもピーク。
待ちくたびれた頃、ノックの音。
荷物だ。
二人で、ドアに走る。早く着替えて寝たいのだ。
ドアの外には、添乗員が立っていた。
夜もだいぶ遅いので、ボーイがいなくて添乗員自身で運んで来てくれたのか、仕事とは言え、トランク29個もほんとご苦労さん。
っと、思って廊下を見回すが、トランクの影も無い?
添乗員、手にセカンドバックらしきものを2個持っているだけだ。
「申し訳ないのですが、トランクは10個しか届かなかったのです。」
???、S戸さん。???、私。
「もう、今夜は届きませんので、このセットをお使い下さい。」
添乗員が手に持っていたのは、噂には聞いていたが今までお世話になった事は無かった、荷物不着時の「お泊りセット」!!
私って、くじ運悪いのよね、いつも・・・
疲れとショックで、S戸さんはベッドに倒れこみ、「もう、寝る〜〜〜。」
なんとか、二人、気を取り直して、お風呂に入って、着たきり雀の衣類少々を洗濯して就寝。